はじめに
スタッフへ、
「商品を提案してほしい」
「もっと店販に取り組んでほしい」
と伝えているのに、なかなか行動してもらえない。
一度は提案しても、断られるとやめてしまう。
できるスタッフだけが販売し、ほかのスタッフは動かない。
結局、オーナーが一人で店販売上を作っている。
このような状態になると、
「スタッフにやる気がない」
「販売に向いていない」
「何度伝えても動いてくれない」
と考えてしまいます。
しかし、スタッフが商品を提案できない原因は、性格や能力だけではありません。
多くの場合、
- なぜ店販に取り組むのか分からない
- 何を聞けばよいか分からない
- どのタイミングで提案すればよいか分からない
- 断られることが怖い
- 頑張っても評価されない
- 店舗としての共通ルールがない
という状態です。
つまり、スタッフが売れないのではありません。
売れるまでの道筋が、店舗に用意されていない
ということです。
今回紹介する事例では、オーナーが先に店販へ取り組み、その成功体験をスタッフへ横展開しました。
その結果、
- スタッフ購買率3%から36%へ
- ほかのスタッフも購買率21%、28%
- 購買率36%のスタッフは商品提案率90%以上
- 店舗の店販売上が月平均約70万円
- オーナー個人は10カ月で店販売上222万円
- 新規リピート率が10%以上向上
という変化が生まれました。
スタッフへ、
「もっと売って」
と伝えた結果ではありません。
オーナーが成果を出し、その方法を分解し、スタッフが迷わず行動できる仕組みに変えた結果です。
この教材で学ぶ5つの仕組み
スタッフ店販を育てるために必要なのは、次の5つです。
- オーナーが先に成功体験を作る
- スタッフの未来と店販をつなげる
- 現場の行動を5ステップにする
- 商品提案率と購買率を確認する
- 評価とフォローで継続させる
この5つをつなげることで、店販は一部の人だけが行う仕事ではなく、サロン全体で行う共通業務へ変わります。
スタッフ店販の全体設計
- オーナーが実践する
- 成功した流れを分解する
- スタッフが目指す未来を確認する
- 店販5ステップを共通ルールにする
- 商品提案率・購買率を確認する
- 個別にフォローする
- 頑張りを評価・還元する
- 店販をサロンの文化にする
1.オーナーが先に成功体験を作る
オーナーができないことを、スタッフへ求めない
スタッフへ店販を任せる前に、まずオーナー自身が実践します。
- お客様の悩みを聞く
- 悩みに合う商品を提案する
- 店内で商品を体験してもらう
- 使用後の変化を確認する
- 購入しなかった方へサンプルを渡す
- 次回来店時に使用感を確認する
この流れを自分で行い、成果が出ることを確認します。
今回の事例では、オーナー自身が10カ月で店販売上222万円を達成しました。
その後、自分が行ってきた流れをスタッフへ落とし込みました。
自分で実践すると、教える内容が具体的になる
オーナーが実践すると、
- どの質問がお客様へ伝わりやすいか
- どこでスタッフが迷うか
- どのタイミングで商品を使うか
- どの言葉で使用感を確認するか
- どのサンプルが購入につながりやすいか
- 次回来店時に何を聞くか
を、自分の経験として伝えられます。
スタッフから見ても、実践していない人から指示される場合と、実際に成果を出した人から教わる場合では、説得力が異なります。
オーナーが行う順番
- 自分で実践する
- 小さな成功体験を作る
- 成功した行動を分解する
- スタッフができる言葉と手順に変える
- スタッフへ落とし込む
最初からスタッフ任せにしないことが重要です。
2.スタッフの未来と店販をつなげる
会社の売上だけでは、スタッフは動かない
スタッフへ、
「店販売上を上げよう」
「今月はあと何万円売ろう」
と伝えるだけでは、店販に取り組む意味が伝わりません。
スタッフからすると、
「会社の売上のために、商品を売らされている」
という感覚になりやすくなります。
店販へ継続して取り組んでもらうには、スタッフ本人が目指している未来を確認します。
スタッフへ聞くこと
今回の事例では、スタッフへ、
美容師として、どのような人生を歩みたいですか?
と聞きました。
その中で、
- プライベートを充実させたい
- 給料を増やしたい
- お客様を掛け持ちせずに働きたい
- 体力に余裕を持ちたい
- 自分の時間を増やしたい
という希望を確認しました。
そして、
店販に取り組むことで時間単価が上がり、客数を増やさなくても売上を作れる。
その結果、給料や時間、働き方を変えられる可能性がある。
と、店販と本人の未来をつなげました。
店販は二つの未来を変える
お客様の未来
髪や頭皮の悩みを、自宅でのケアまで含めて改善する。
スタッフの未来
時間、給料、体力、働き方を変える。
店販は、会社の利益だけを作るものではありません。
お客様とスタッフ、両方の未来を変えるための手段です。
マインドセットは一度で終わらない
スタッフ全員が、最初から同じように行動できるわけではありません。
すぐに取り組めるスタッフもいれば、提案に不安を感じるスタッフもいます。
今回の事例では、月に1回ほどミーティングを行い、
- 現在困っていること
- 目指している働き方
- 店販へ取り組む理由
- 行動できなかった原因
を確認していました。
一度説明して終わるのではなく、継続して話し合います。
3.現場の行動を5ステップにする
スタッフへ、
「もっとカウンセリングして」
「商品を提案して」
と伝えるだけでは、行動できません。
スタッフ全員が同じ流れで動けるように、現場の行動を5ステップにします。
- 悩みを一つ聞く
- 悩みに合う商品を体験してもらう
- 使用後の変化を確認する
- サンプルを渡す
- カルテへ記録し、次回来店時に確認する
STEP1|悩みを一つ聞く
通常の技術カウンセリングが終わった後に、次のように聞きます。
ここ1年くらいで、髪や頭皮について何かお悩みはありますか?
トリートメントを行っているお客様には、
いつもトリートメントをされていますが、髪について何かお悩みはありますか?
と聞きます。
最初から難しい深掘りを求めません。
まずは、悩みを一つ聞くことを、スタッフ全員の共通ルールにします。
店舗ルール
- 技術カウンセリング後に聞く
- 商品名から話を始めない
- 最低一つ、悩みを聞く
- お客様の答えを否定しない
- すぐに商品を売ろうとしない
STEP2|悩みに合う商品を体験してもらう
お客様から、
- 毛先のダメージが気になる
- 引っかかりが気になる
- 頭皮がかゆい
という悩みを聞いた場合は、
その悩みに合う商品を取り扱っているので、今日のシャンプーやトリートメントで使わせていただいてもよいですか?
と確認します。
商品を買うようにすすめるのではありません。
まず、店内で体験してもらいます。
店舗ルール
- 悩みと商品をつなげる
- 購入ではなく体験を提案する
- 使用前に許可を取る
- 何のために使う商品かを伝える
- スタッフ自身も使用した商品を提案する
STEP3|使用後の変化を確認する
商品を使用した後は、お客様と一緒に変化を確認します。
シャンプー台から上がった後に、
いつものお風呂上がりの手触りと比べて、今はいかがですか?
と聞きます。
ドライ後には、
乾かした後の手触りは、いつもと比べてどうですか?
と確認します。
香りについても、
香りのお好みはいかがですか?
と聞きます。
美容師が一方的に効果を説明するのではありません。
お客様自身に、普段との違いを感じてもらいます。
店舗ルール
- 濡れている状態で触れてもらう
- 乾いた後にも触れてもらう
- 普段との違いを聞く
- 香りなどの好みも確認する
- 使用した商品の名前と特徴を伝える
STEP4|サンプルを渡す
店内で良いと感じても、すぐに購入しないお客様もいます。
その場合は、無理に購入をすすめず、サンプルを渡します。
今回の事例では、
- 最低3日
- 理想は約7日
使用できる量を案内していました。
ご自宅で使ってみて、美容室から帰った後の状態と比べてみてください。
と伝えます。
今回の事例では、正しい流れでサンプルを10人へ渡した場合、5人から6人ほどが購入につながっていました。
サンプルは、単に無料で商品を配るものではありません。
お客様が自宅で使用し、自分に合うかを確認するための体験機会です。
店舗ルール
- 購入しなかった方へ案内する
- 自宅で何を確認するか伝える
- 無理に購入を迫らない
- 渡しただけで終わらせない
- オーナーが必要なサンプル環境を整える
STEP5|カルテへ記録し、次回来店時に確認する
サンプル配布が増えると、
- 誰に渡したのか
- どのような悩みがあったのか
- 何を渡したのか
を忘れてしまいます。
そのため、サンプルを渡したら必ずカルテへ記録します。
カルテへ記録する内容
- お客様の悩み
- 店内で使用した商品
- 渡したサンプル
- お客様の反応
- 次回来店時に確認すること
次回来店時には、
前回の商品を使ってみて、いかがでしたか?
と聞きます。
すぐに、
「購入しますか?」
とは聞きません。
まず使用感を確認します。
- 手触りは変わったか
- トリートメントの持ちは変わったか
- 香りはどうだったか
- 使いにくい部分はなかったか
- 嫌だったところはなかったか
良かった意見だけでなく、悪かった意見も聞きます。
「良かったです」
と返ってきた場合も、
どの部分が良かったですか?
と、さらに確認します。
合わなかった場合は、別の商品や方法を考えます。
店舗ルール
- サンプル配布時にカルテへ記録する
- 次回来店時に使用感を確認する
- 良かった点を具体的に聞く
- 嫌だった点も聞く
- すぐに購入を迫らない
- 合わなければ別の方法を考える
現場で使用する5つの言葉
- 悩みを聞く
「髪や頭皮について、何かお悩みはありますか?」 - 体験してもらう
「悩みに合う商品を、今日使わせていただいてもよいですか?」 - 変化を確認する
「普段の手触りと比べて、いかがですか?」 - サンプルを渡す
「ご自宅でも数日使い、違いを比べてみてください」 - 次回来店時に確認する
「前回使ってみて、いかがでしたか?」
この流れをスタッフ全員の共通ルールにします。
4.商品提案率と購買率を確認する
売上だけでは、スタッフの行動が見えない
一つの高額商品が売れれば、店販売上は上がります。
しかし、一部のお客様にしか商品を伝えていない場合、店舗全体の仕組みができているとはいえません。
スタッフ店販では、次の順番で数字を見ます。
- 商品提案率
- 購買率
- 店販売上
商品提案率
担当したお客様のうち、何人へ商品を提案したかを確認します。
今回の事例では、購買率36%のスタッフは、商品提案率が90%を超えていました。
一方、購買率がまだ伸びていないスタッフは、商品提案率が50%から60%ほどでした。
商品が売れない原因を考える前に、
そもそも必要なお客様へ提案できているか
を確認します。
購買率
担当したお客様のうち、何人が商品を購入したかを確認します。
今回、一人のスタッフは購買率3%から36%へ変化しました。
3人に1人以上が商品を購入している状態です。
購買率が上がっている場合、
- 悩みを聞けている
- 必要な商品を伝えられている
- 商品体験ができている
- お客様との信頼が深まっている
可能性があります。
スタッフを責めず、止まっている場所を見る
数字が伸びないスタッフがいた場合、
「もっと頑張って」
と伝えるのではありません。
- そもそも提案できているか
- 悩みを聞けているか
- 商品体験まで進めているか
- 使用感を確認できているか
- 次回来店時にフォローできているか
を確認します。
スタッフ本人ではなく、5ステップのどこで止まっているかを見ます。
5.評価とフォローで継続させる
頑張りが本人へ返る設計にする
スタッフが店販へ取り組んでも、評価や還元がほとんどなければ、
「会社の利益のためにやっている」
と感じる可能性があります。
今回のセミナーでは、実施事例として、
- 通常時は20%程度
- 12月は50%
をスタッフへ還元するケースが紹介されました。
例えば、12月にスタッフが40万円を販売し、50%を還元した場合、20万円のボーナスになります。
これは、すべてのサロンで同じ割合にするという意味ではありません。
重要なのは、スタッフの頑張りが本人の給料や働き方へ返る設計を作ることです。
評価制度は投資として考える
スタッフへの還元は、単なる人件費ではありません。
- スタッフの収入を増やす
- 店販の成功体験を作る
- 働く意欲を高める
- 離職を防ぐ
- サロンで長く働ける環境を作る
ための投資として考えられています。
オーナーが先に店販売上を作れていれば、スタッフへ還元する環境も作りやすくなります。
月1回、スタッフごとにフォローする
同じ仕組みを渡しても、スタッフによって止まる場所は異なります。
- 商品提案が怖い
- 質問の言葉が出てこない
- 商品知識に自信がない
- 使用後の確認ができない
- サンプルを渡して終わっている
という違いがあります。
定期的に話を聞き、
- どこで止まっているか
- 何に不安を感じているか
- 次に何を変えるか
- 本人が目指す未来に近づいているか
を確認します。
成功体験を店舗で共有する
スタッフが商品を提案した。
お客様が体験してくれた。
悩みが改善した。
商品を購入してもらえた。
お客様から感謝された。
給料やボーナスが増えた。
この成功体験を店舗内で共有します。
店販売上だけではなく、
- お客様の変化
- 感謝された言葉
- 提案できた行動
- スタッフ自身の変化
も共有します。
成功体験が積み重なることで、店販に対するマイナスの印象が変わります。
店販が店舗文化になるまで
- オーナーが成果を出す
- 店販の目的を共有する
- 5ステップを共通ルールにする
- 商品提案率・購買率を確認する
- スタッフごとにフォローする
- 成果を評価・還元する
- 成功体験を共有する
- 店販が当たり前の店舗文化になる
文化になれば、新しく入るスタッフにも、
「この店舗では、お客様の悩みを聞き、必要な商品を伝えることが当たり前」
という状態を作れます。
仕組みを整えたことで起きた変化
スタッフの変化
- 購買率が3%から36%へ上がった
- 商品提案率90%以上のスタッフが生まれた
- 店販に対するマイナスイメージが減った
- 給料や働き方へ店販がつながった
お客様の変化
- 髪や頭皮の状態が良くなった
- 周囲から褒められるようになった
- 紹介につながった
- 商品だけを購入するために来店する方が増えた
サロンの変化
- 店舗店販売上が月平均約70万円になった
- 新規リピート率が10%以上上がった
- 店販がオーナーだけの仕事ではなくなった
- スタッフとのミーティング時間を作れるようになった
店販の仕組みは、商品売上だけではなく、お客様満足、リピート、給料、時間の使い方にも影響します。
実践シート1|スタッフ店販の5つの仕組み診断
現在の状態に印を付けてください。
| 5つの仕組み | できている | 一部できている | できていない |
|---|---|---|---|
| オーナー自身に店販の成功体験がある | □ | □ | □ |
| スタッフの未来と店販をつなげている | □ | □ | □ |
| 店販5ステップが共通ルールになっている | □ | □ | □ |
| 商品提案率・購買率を確認している | □ | □ | □ |
| 評価・還元・個別フォローがある | □ | □ | □ |
最優先で整える仕組み
【記入欄】
今月行うこと
【記入欄】
実践シート2|店舗共通の店販5ステップ
STEP1|悩みを聞く言葉
【記入欄】
STEP2|商品を体験してもらう言葉
【記入欄】
STEP3|使用後の変化を確認する言葉
【記入欄】
STEP4|サンプルを渡す言葉
【記入欄】
STEP5|次回来店時に確認する言葉
【記入欄】
カルテへ記録する内容
【記入欄】
今月確認する数字
商品提案率
【記入欄】
購買率
【記入欄】
店販売上
【記入欄】
教材を読んだ後に行う5つのこと
1.オーナー自身の店販導線を書き出す
現在、自分がどのような流れで商品を提案しているかを整理します。
2.スタッフが目指す未来を聞く
売上目標ではなく、給料、時間、働き方について確認します。
3.悩みを一つ聞く言葉を決める
スタッフ全員が同じ入り口から始められるようにします。
4.店販5ステップを店舗ルールにする
体験、使用感確認、サンプル、カルテ、次回来店フォローまで決めます。
5.商品提案率を確認する
売上の前に、必要なお客様へ提案できているかを確認します。
最後に
スタッフが商品を売ってくれない。
その原因を、スタッフのやる気や性格だけに求めても、状況は変わりません。
スタッフは、
- なぜ店販へ取り組むのか
- 何を聞けばよいのか
- どの商品を使えばよいのか
- 使用後に何を確認すればよいのか
- 購入しなかった方へ何をすればよいのか
- 頑張った結果がどう評価されるのか
が分からない状態かもしれません。
オーナーが先に実践し、成功体験を作る。
スタッフが目指す未来を聞く。
現場の行動を5ステップにする。
商品提案率と購買率を確認する。
スタッフごとに困っている場所をフォローする。
頑張りを正しく評価し、本人へ還元する。
ここまで整えて、初めてスタッフ店販は継続します。
スタッフを変えようとする前に、スタッフが歩ける道筋を作る。
スタッフが売れないのではありません。
まだ、迷わず実践できる道筋が用意されていないだけです。
オーナーの成功体験を、誰でも実行できる共通ルールへ変える。
その仕組みができたとき、店販は一部の人だけが行う仕事ではなく、
サロン全体で、お客様の悩みを解決する文化
へ変わります。
